きょうは、遅番だったんで、だれもいなくなってから、職場の建物を閉めて帰る。
だれもいない、だだっぴろい部屋。とうぜん、ヒトの気配はない。とおくで古い空調のパチンパチンゆう音だけが聞こえる。
ふとテーブルの上を見ると本がおいてあって、おー町田尚子さん(の挿絵)じゃん、と手にとった。
絵と題名でわかりきっとったのに、立ったまま、その絵本をさいごまで読んでしまった。怪談だった。
こわい。
それから、建物じゅうをまわって、つけっぱなしだのドアだの窓だのをチェックしてまわるんじゃけど。
こわい。
指さし確認して、"よし"、と小声で言うんじゃけど。
こわい。
暗い建てもんの中をまわってると、どきどきして、ちゃんと見てるんだかわからんくなった。見るのがこわい。くっそ、こわい。もう許して、かんべんして、と思いながら歩いた。
さいごに機械警備をかけて外に出た。まじでくそこわい。ふざけんな、だれなんだ、あんな本置いたんは。
オトナになるとこわくなくなるわけじゃあない。ガマンしてるだけだ。
"いるの いないの"
文:京極さん
編:忘れた
絵:町田尚子さん
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