窓をあけて走ると、いろいろな音がよく聞こえるし、においまでする。車んなかと外が、ひとつながりになってるような気がする。
鳥のなく声、草の葉のにおい、自分の車の排ガスのにおい、潮のにおい。ドブ川のなつかしいにおいがすることもあるし、田舎の香水がかおることもある。
おとついは、窓だけでなく、屋根までとっぱらって走ったので、360度、いろんなとっから音やにおいがした。
頭の真上でトンビのピーヒョロロが聞こえ、港ではニャーニャー海鳥がないていた。いたるところで草刈ってたので、草っ葉のにおいもよくした。海産物のお土産屋さんの前を通ると、鼻がまがるぐらいに乾物のにおいがした。
で、島の中をとことこと走っていると、ときどきキンモクセイの花のにおいがした。ような気がした。「あれっ」と思うと、すぐに消えてしまう。気のせいか、と思うと、またかすかににおう、気がする。
みまわしても、オレンジのちっこい花をつけた木は見あたらなかった。
きのう、仕事の行き帰り。てくてく歩いてると、やっぱりキンモクセイの花のにおいが、かすかにしたような、気がした。
でも、ここの木はキンモクセイだぜ、と目をつけてる並木にも花はまだなかった。
そして今朝のこと。
ベランダで洗濯を干していると、つよい風にのって、はっきりとキンモクセイのかおりがした。こんどは確信がもてるくらいに、あざやかににおった。
どっからくるのかはわからんかったけど、「いいにおいだ」と思い、深呼吸をした。
ああ秋がきたんだなあ、と思った。