闇夜のむこうに、白っぽく、ぼんやり浮かんで見えるものがいた。
野犬か、めずらしいな、と思いながら近づくと、でっけーイノシシだった。
おいおい、と声にだしてふり返った。
いかに田舎とはいえ、集落の中を走る国道である。夜間は、車は60キロ超でとばして走る道。
あんなもんをひいた日にゃあ、車もただではすまない。
あんな集落までシシがおりてくるんかい、と考えながら走っていると、まわりが明るくなり、国道は2車線になった。
反対車線を、すごいイルミネーションが、ビカビカ光りながら走ってくる。ふらふらとゆれながら。
それは、"デコ・トラ"ならぬ、"デコ・チャリ"だった。
よく聞きとれなかったが、威勢のいい、男性ボーカルの曲を、大音量で鳴らして、兄ちゃんが、左右に体をゆらしながら自転車をこいでいた。
うしろには、でっかい旗がたててあって、ばさばさとはためいていた。
すげっ、と声にだしてふり返った。
でも、兄ちゃん、2車線の国道で、車道をちんたら走ったら、あぶないよ。
夜走ると、ふだん見かけないものを、いろいろ見る。
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