祖母の家だった。
家の中にヒトの気配はなく、自分だけのようだった。
小便を我慢していたので、廊下をとおってトイレまで行った。
見慣れた薄いドアをあけて中に入ると、そこは開けた川原のようなところだった。
地べたは固い土で、石はなかった。
竹か木か、それほど背の高くない木に囲まれているような雰囲気があったが、目には入らなかった。
右手を見ると、幅1mほどの道のようなものがあった。
低いコンクリのようなふちがあり、中は大きな丸っこい石が、中流域の川原のようにごろごろと転がしてあった。
”道”は、きれいに同じ幅のままで、ずうーっと向こうまで続いていた。
”道”の始点の横に、粗末なイスがあった。パイプイスだったかもしれない。
「そうか、ここで用をたすのか」とわかったので、イスを持って”道”の正面にすえ、それに座って、小便をはじめた。
小便は、”道”の石に向かって飛んでいったが、石にあたると、ごろごろと転がる石たちを洗うかのような、とうとうとした流れになった。
”道”の幅いっぱいになるほどではないが、太く、速く、川のように流れた。
不思議と音は聞こえなかった。
”道”の向こうに目をやると、ずっと向こうのほうで、ゆるやかに”道”がまがっており、勢いで曲がりきれなくなった流れが、低いふちをこえて、”道”の外に、だーだーと流れ出ていた。
「けっこう、流れが速いな」
そう思ったところで目が覚めた。
時計を手にとると、まだ4時過ぎだった。
小便でお腹がぱんぱんだったので、ゆっくりと起きて上着をき、トイレに行った。
そのまま寝るのは、なんだかしゃくだったので、ベランダでたばこを1本吸ってから寝た。
祖母はいま施設で生活しており、祖母宅にはこの数年行ったことがない。
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