たんに、人が死ぬところや登場人物のおかれた状況が残酷ゆうのでなく、温度のまったくない悪意だとか、からからにかわいた絶望だとか・・・、そんなんを、つべたい目線で観察しとる感じが、怖(こえ)え。
きっつい話に、しょうしょうは耐性があるつもりじゃったけど、さすがに置いてかれた。
で、口直しっちゅうわけでもないけど、また、吉野朔実さんのマンガで"瞳子"を書架からひっぱりだして読んだ。
こっちも主人公といい、その他登場人物といい、ひとくせもふたくせもある人物がでてくる。ほとんど一人称ゆうのもかわらない。
でも、みょうに明るい諦観はあるけど、絶望はなく、でるヒトみんながたくましい。
ヒトの言いなりで耐えるだけのように当初えがかれていた主人公の母親も、じつはキモが太くてたくましいゆうことが見えてくる。
「いろいろあるけど、わたしもみんなも、生きてゆくのよ」ちゅう感じ(かってな印象)が、"いたいけな瞳"を読んだときの気持ちに近かった。
"いたいけな瞳"は、吉野さんのマンガの中で、自分がもっとも好きなもんのひとつ。
作者の青春時代の'80年代を意識したという設定もなつかしくて、読み終わったときにほっとした。
作者は、ずっといた出版社を離れて初めての作品だったそうじゃけど(それはびっくり)、気負いなく、たんたんと、このマンガをかいてるように感じられた。
気合が入りまくってたのは出版社で、本の装丁がべらぼうにこっていた。
カバーをはぐって、本のすみずみまで、穴があくぐらいみた。
この作家を迎えるにあたっての、出版社の熱意だか誠意だかの表現だったんじゃろか。
"瞳子"
吉野朔実/著
小学館発行
装丁/祖父江慎ほか
2001年発行
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