薄暗いロータリーに、若い女性がしゃがみこんでいた。
とおくてぼんやりとしか見えなかったが、首ががっくり下をむいとった。
ロータリーをぐるうと回りながらじいっと見ていたが、がっくり下をむいたままだった。
心配になったので、そのままぐるっとまわって、「だいじょうぶですか?」と声をかけた。あんまり近づくとびびるだろうと気い使って、少し距離をとったところから言ってみた。
「はい?」ゆうて首をおこしてこっちを見る反応速度は早くて、目はしっかりしとった。
「だいじょうぶですか?」
「部屋のカギなくしたんです。」
悲しそうな顔をしたお嬢さんは、ほんとに若い娘さんじゃった。ひざの上のバッグをいっしょうけんめい引っかきまわしとった。
自分は、「ああ、そう」と、ほうけた返事をしてその場を離れた。
冷たかった、も少し気のきいた言葉でも言やあよかったなと、歩きながら思ったが、具合がわりいわけじゃないゆうてわかったんで、安心した。オトナだからなんとかするじゃろう。
自分が所帯持ちでなくて若かったら、もっと親身になっとっただろう。スケベごころから。かわいかったし。
なんにせよ、ご愁傷さま。
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