というわけで、遠慮なく昼から帰らせてもらうことにした。
弁当を持ってっとったんじゃけど、思いつきで、スーパーの屋上で食べて帰ることにした。絶景というほどじゃないが、そっからは、海やそのむこうの島々が見渡せる。
よいしょっと屋上のドアを開けて外に出ると、大音量のシャウトが聞こえた。
"なんか聞こえとるんかも"、ゆうあの姉さんだった。
ちょっと遠回りに姉さんの前を通って、少し離れたコンクリの上に腰かけた。
弁当を広げて、いただきますをして食べ始めた。その間も、姉さんの魂のシャウトは続いていた。シャウトの内容は結構つらそうだったが、服とか身だしなみはきれいで、"容姿:かまわない"ではなかった。
空は、薄曇りゆうぐらいで、明るかったが、海近くの建物や遠くの島がかすんで見えた。
姉さんのシャウトは、バラッドみたいな歌になっていた。メロディはともかく、ええ声しとるなと思いながら聞いていた。のどを何度かつぶしとるんかも。
もと歌があるんだろうか?、エンドレスだから即興だろうか、でも即興にしてはきれいに歌になっとるな、などと考えながら、パクパクと弁当を食っていた。
正直ゆうと、フルパワーでシャウトされてて、ちょっとびびった。まだ修業が足りてないようだ。
屋上には自分と姉さんだけだったが、掃除のお姉さんが、シャウトの姉さんとコンクリにこしかけて弁当をぱくついてるおっさん(自分)の前を行ったり来たりしていた。
シャウトの姉さんと、平日昼間に屋上で手弁当を食ってるおっさん。けっこう変わった人間だと思うんじゃけど、掃除の姉さんは、避けて無視するでなく、淡々と仕事をしてるふうだった。
なにか思っとるんか、なにも思ってないんか。表情からは、まったくわからず。
しばらく、ぼんやり空見たり、海見たり、叫んでる姉さんを見たりして、ぼーっと飯を食っていた。
お弁当を食べ終わって、ごちそうさまをしてから、たばこに火をつけた。
姉さんは、カチンカチンと、つぎつぎにたばこに火をつけながら、シャウトを続けてた。
そのうち、若い兄ちゃんが3人屋上に入ってきて、離れたとこの灰皿を囲んで談笑をはじめた。
つぎに、買い物をおえたばあちゃんがやってきて、シャウトの姉ちゃんと自分の間ぐらいんとこに腰かけて、たばこを吸いはじめた。
いつのまにか、姉さんの魂の叫びがおわってて、じいっと立っていた。
その間も、掃除の姉さんは、もくもくと仕事してて、自分やシャウトの姉ちゃんのすぐ前を、行ったり来たりしていた。
しばらくすると、シャウトの姉ちゃんは、静かに屋上から出ていった。
さて、この場の境界は、どこにあったのでしょう。
弁当ぱくついてるおっさんと掃除のお姉さん。3人組の兄さん、静かにたばこ吸ってるばあちゃん…。
人の数の問題なんか、距離なんか、密度なんか?
とても興味深い。
人数とかでなく、自分や掃除の姉さんに、なんかあるんだったら、またはないんだったら(シャウトの姉さんにとって)、チョットうれしい。
まあ、過剰な自意識ではあるが。
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